松岡茂樹

家具職人 デザイナー

【 松岡茂樹 】

まつおか しげき

1977年生まれ、東京都出身。22歳で家具職人の修行を開始し、2003年に家具工房KOMAを立ち上げる。2015年以降、世界各国のデザインアワードを獲得。2020年には厚生労働大臣より「現代の名工」として認定され、表彰される。

MESSAGE 20歳の頃は何をしたらいいのか分からず、ぼんやりした不安とありあまる時間を潰す手段の一つに読書がありました。若い頃に活字に多く触れるのは、何というか…上手く言語化できなくてイマイチ説得力に欠けますが、今の自分を創った大切な一つである事は確かです。今回紹介した本は、その頃に読んで、未だ過去にならない3冊です。

罪と罰

罪と罰

ドストエフスキー
工藤精一郎 訳
新潮文庫
上869円、下924円(各税込)

タイトルは有名だけど「重い暗い古い難しそう」そんなイメージを持ったまま、いざ勇気を出して読み始めると、スリリングでスピーディーな展開とグッとくる心理描写は、現代のアニメや映画に近い感覚を覚える。沢山の考える機会をくれた忘れられない一冊。

罪と罰

皆月

花村萬月
講談社文庫
692円(税込)

日常に読書が加わるきっかけとなった一冊。ストレートな暴力と露骨すぎない優しさや愛おしさに緊張感を持ちながら、アパートのキッチンであぐらをかいたまま一晩で読み終え、物語の舞台がどうしても見たくなって能登半島の「皆月」までバイク旅に出かけたのを覚えている。

姑獲鳥の夏

姑獲鳥の夏

京極夏彦
講談社文庫
上586円、下628円(各税込)

今、手にした感覚や感情を正しく伝える手段など少しもないし、内に秘めた本当は言葉や文字で表すほどに安っぽさを感じるが、この小説の古風だが美しい日本語には表現の奥行と理が知れる。活字の洪水に溺れることが心地良く、文章を大切にするきっかけになった一冊。

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