1955年、東京都生まれ。国内海外を、年間600食ほど食べ歩き、食情報を発信。『味の手帖』、『食楽』他、連載多数。「日本橋街大學」講師、「日本鍋奉行協会」顧問。最新刊は『超一流のサッポロ一番の作り方』(ぴあ)。
どの本も料理を作る、食べるということへの執着があり、食べることが欠かせない人間としての道標であり、聖書である。飛び込んでくる言葉は、人生のお守りである。食欲とは人間の本能であると共に、業であり、エロスであり、ユーモアであり、哲学でもあり、恋であることも知る。食べることに興味がある方は、ぜひ読んでほしい。いや普段、食べ物や料理の本など手にしない人こそ、ぜひその機会を得てほしい。

素人庖丁記
嵐山光三郎
講談社文庫
406円(税込)
氏が作った料理を一篇ずつ納めたエッセイ。カレーの理想は泥と言い、冷飯を理論的に絶賛する、独自の真理的決めつけが、痛快極まりない。カツ丼、饅頭、竹輪、温泉卵から谷崎潤一郎の料理まで挑戦し、定義づけるが、独自の視点に頷き、笑う。

白いページ
開高健
光文社文庫
1166円(税込)
松葉蟹を書くのに、一週間毎日食べ続けたという氏の食エッセイ。物事の本質を見極めんと精神と体を傾けた大作家の筆致に圧倒される。いずれも生命の神秘に迫ろうとした気迫があって、食べ物の表現は、生物学であり、官能小説であることを伝える。

田代和久のフランス料理
田代和久
柴田書店
4290円(税込)
「この料理の苦しみがあったから、今まで料理人を続けてこれた」。表紙には、そのスペシャリテ「イワシとジャガイモの重ね焼き」が選ばれている。来る日も来る日も試行錯誤を繰り返して30数年東京フランス料理界のトップを走り続けてきた「ラブランシュ」田代和久氏(現72歳)の料理本。ベテランとしての地位にあぐらをかくことなく、日々の現状に満足することなく、常に新鮮な感覚を持ち続け、新たな理想に向かって仕事をする名職人の珠玉なる傑作が並ぶ。