建築家・都市計画家
團 紀彦
だん のりひこ
1956年神奈川県生まれ。東京大学工学部建築学科卒。代表作に日月潭風景管理処(2010年)、コレド室町(2010年)、台北桃園国際空港第一ターミナル(2010年)
世界はいま混乱の只中にあり、今という時代の真の姿を捉えることも困難になりつつある。人間の歴史観や価値観もまた時代のバイアスによって大きく左右される。視点の多様性を示したこれらの著作は客観的な視座を取り戻すことに役立つと思う。
アラブが見た十字軍
アミン・マアルーフ
牟田口義郎/新川雅子 訳
ちくま学芸文庫
1,650円(税込)
砂塵の中を浮浪者の群れが押し寄せてきた。これがアラブから見た十字軍到来の第一報だった。西洋側による十字軍遠征の歴史はキリスト教徒の「聖戦」として記述されてきたが、高い文明を誇るアラブ世界は200 年に及ぶこの不毛な戦いをどのように見ていたのだろうか。
日本の歴史をよみなおす (全)
網野善彦
ちくま学芸文庫
1,320円(税込)
中世の絵画の中に普通では気に留めぬような出立ちをした人達がいる。筆者は鋭い観察眼により、そこから当時の社会の真の姿を解明していく。童とは必ずしも子供だけを指すのではなく、大人にもそうした髪型を持つ階層がいたことを突き止めるなど、目から鱗とはこうした本を指すのだと思った。
[新版] アメリカ大都市の死と生
ジェイン・ジェイコブズ
山形浩生 訳
鹿島出版会
3,630円(税込)
座り込みによる逮捕歴八回。暴力的な都市開発からニューヨークを守った一人の女性活動家の目が世界の都市デザインの方向性を一変した。専門家ではない著者が、「常識の天才」と呼ばれた理由は、社会全体が妄想に取り憑かれていた時にただ一人、真実を見ることができたからだろう。