キャスター・エッセイスト
南美希子
みなみ みきこ

元テレビ朝日アナウンサー。エッセイスト・コメンテーターとして雑誌・テレビ・ラジオなどで活躍中。東京理科大学オープンカレッジでは話し方の講師も務めている。近著に『老けない人ほどよく喋る』(ワニブックス)がある。
低下が懸念される読解力は、まさに人生を切り拓く力に直結します。若くて頭の柔らかいうちにとにかく読んで読んで読みまくることです。考える力も養われます。ジャンルを問わず親しんで欲しいと、この3冊を選びました。

暇と退屈の倫理学
國分功一郎
新潮文庫
990円(税込)
定住社会が根付いて以来、人類が闘い続けるテーマとなった暇と退屈について目から鱗の哲学書。マルクスやハイデッガーが「そうだったのか」と分かる教養書でもある。暇は退屈にあらず、では暇を退屈にしないためにどう生きるべきか。人生を楽しみ思考することなんだと教えられる。

沈黙
遠藤周作
新潮文庫
693円(税込)
島原の乱の後、ポルトガル人宣教師と隠れキリシタンが味わった壮絶な弾圧が史実に基づき克明に描かれ、暗黒の情景が映像の如く蘇る。信仰とは何かを切実に考えさせられる一冊。信じ続けることで救われるのか、神は沈黙を破ることなく我々を突き放すのか。人生を捉えるのに欠かせぬ視点がここにある。

エアー2.0
榎本憲男
小学館文庫
847円(税込)
著者の本業は映画監督らしい。受賞作でもなければ大きく話題になった作品でもないが、こういう本の中にきらりと光る面白い作品が存在する。日本社会の断層をえぐりつつ、サスペンス的要素もあり、読み始めたら寝食を忘れるくらい面白い。読んだもの勝ちの小説だ。