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あらゆるジャンルの「ものがたり」 をパブリックに昇華する総合出版社
講談社

コミック、小説、雑誌、ウェブメディア、アニメ、ゲーム――。
扱うコンテンツはじつに多彩! 人事部長と入社2~3年目の若手社員に、
講談社の魅力を語っていただきました。

Voice:01 人事部長 川端里恵 さん

個人の想いを形にするために変化し続けるお仕事です

編集者は何のプロでもないけれど、
何にでもなれるワイルドカード

 編集者の仕事の意味について考えさせられる出来事がありました。新型コロナウィルス感染予防対策が手探りだった2020年。雑誌の撮影現場にも厳しい人数制限がかけられました。最小限のスタッフに絞ろうとすると、最初に削られるべきは「編集者」だと、自虐的でもなんでもなく真剣に考えました。被写体であるモデルや俳優、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイク……それぞれに専門家としての替え難い役割がありますが、編集者だけが何のプロでもないのです。そもそも出版社の仕事自体“不要不急”ではありません。私はそれまで15年くらい女性誌の編集者をしてきましたが、時間と心を捧げてきたものはなんだったのかと考えさせられました。
 コロナ対策はコンテンツの届け方と楽しまれ方を大きく変えました。リアルとオンラインのハイブリッドが当たり前になり、「好き」は「推す」に、「推し」は課金を伴う「活動」になりました。そうした「活動」の裏側で、編集者は作家や作品のマネージャーになり、プロデューサーになり、アニメやゲームやアプリ、イベントの監修者となり、ときにインフルエンサーにもなる、タイミングによって役割が変わる“ワイルドカード”に。楽しまれ方が広がることで、編集者だけでなく、営業、宣伝、経理にいたるまで、仕事の中身はさま変わりしつつあります。この先、出版の仕事はもっと変わっていくでしょう。「出版社」という名前は残っても、数年のうちに「版を刷って出す」仕事はなくなっているかもしれません。

一番熱烈なファンであり、
一番の読者であることが原動力

 変わりゆく出版業界の中で講談社の未来を語る前に、私が講談社に入った理由を少しだけお話しさせてください。母も祖母も漫画が大好きな人で、実家の本棚には手塚治虫先生の『アドルフに告ぐ』(文藝春秋)、『ブラック・ジャック』(秋田書店)、水木杏子先生(原作)、いがらしゆみこ先生(作画)の『キャンディ♡キャンディ』(講談社)、美内すずえ先生の『ガラスの仮面』(白泉社)などがずらりと並んでいました。中でも、子どもの頃の私が夢中になったのがボクシング漫画の金字塔『あしたのジョー』(原作:高森朝雄(梶原一騎)・作画:ちばてつや、講談社)でした。「週刊少年マガジン」連載当時(1967〜73年)、主人公・矢吹丈の最大のライバルであった力石徹が丈との死闘の末に命尽きると、嘆き悲しむファンの声が編集部に殺到したといいます。想像を超えた反響に、講談社は本社の講堂で「力石徹のお葬式」を開いたらしいという話を祖母から聞いて、子ども心に「講談社ってイケてる会社だな」と思いました。今でいう「ファンミ」ですよね。のちに読んだ記録(『ちばてつやとジョーの闘いと青春の1954日』)では、800人あまりの弔問客が参列。目を赤く泣き腫らした少年・少女たちを見て、ちばてつや先生は責任を感じたと言います。

 講談社に入った今、お坊さんまで呼んだおごそかな式典を執り行うことにエラい人は反対しなかったのかと余計な心配もしますが、きっとエラい人たちも編集部も販売部も宣伝部もみんなジョーが、力石が好きだったんだろうと想像します。

本社の講堂で行われた「力石徹のお葬式」の様子。ファンのみならず、講談社の社員も力石との別れを惜しんだ。

 ここ最近、出版社の仕事が「コンテンツビジネス」、「ファンビジネス」、「IPビジネス」といった呼び方をされるようになりました。正直にいうと、私はどれもあまりしっくりきていません。なんとかビジネスの前に、作家や漫画家、読者などの「個人の想い」を形にすることが私たちの仕事の核にあります。さらに、作品に携わる人たちが、それぞれにその作品の一番熱心なファンであり、一番の読者である、そんなひとりひとりの想いの伝播がたくさんの人の心を動かす、という実感が年々強くなっています。

 私は今、人事部長の立場となって、数多くの採用面接に立ち会うことになりました。出版社を目指す動機として、ある本や漫画との出会いが語られるとき、私はいつも少し泣きそうになります。いじめや不登校といった出口の見えない時期にこんな物語に救われたと喋りながら、感極まって涙が溢れてしまう受験者も少なくありません。出版社の仕事は不要不急だといいましたが、こんなふうに誰かの人生に強い影響を与えることがあります。今までだって真剣に働いてきたけど、もっと真剣にやらなくちゃという気持ちになります。そして同時に「物語に目を泣き腫らしたことがある人の人生は豊かだ」と思うのです。

川端さんおすすめの本

『ちばてつやとジョーの闘いと青春の1954日

ちばてつや、高森朝雄、豊福きこう 
講談社 1,430円(税込)

週刊誌で漫画を描くのはまさに闘い。真っ白な灰になるラストシーンまでの苦悩を綴った力闘の記録。仕事にやる気が出ないとき、これを読んで奮い立たせます。

『夢を叶えるために脳はある「私という現象」、
高校生と脳を語り尽くす』

池谷裕二 
講談社 2,420円(税込)

人工知能や機械学習の発達によって、人間がやるべき仕事はどう変わっていくのだろうと最近よく考えます。脳科学の第一人者・池谷裕二先生と高校生の対話で綴られた読みやすい講義録です。

Profile
2002年立教大学卒業後、講談社入社。広告営業部門へ配属後、女性誌「with」「VOCE」「FRaU」、ウェブマガジン「mi-mollet」編集部に在籍。2022年より人事部長に。おすすめの本を紹介するポッドキャスト「真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室」を配信中。

Voice:02 高橋茉由 さん 2022年4月、講談社入社。同年6月より書籍営業部に勤務。

面白さをどう伝えるか、試行錯誤の日々です

 私は理系の大学院出身です。研究者の道も考えましたが、将来のほかの可能性を想像した時にふと、昔から本が大好きだったことに思い至って。本の面白さを伝える仕事がしたくて、講談社に入社しました。
 営業の仕事は、初版・重版の部数を検討したり、書店様の注文に対応したり、宣伝施策を考えたりと多彩です。担当作の面白さをどうやって伝えようかと考える時間がとくに楽しいですね。
 今は「群像」と単行本、文庫の販売と宣伝を担当しています。「群像」は分厚さとは裏腹に驚くほど軽くて、面白い作品に必ず出合える文芸誌。連載時から大好きだった百瀬文さんの『なめらかな人』は、プルーフ(試し読み版)とフリーペーパーを制作しました。学生時代から大ファンだった高瀬隼子さんの『新しい恋愛』は、読んで大きく売り伸ばしたいと思い、強気の初版部数を提案しました。特設HPを作ったり、高瀬さんと書店員さんのオンライン交流会を開くなど、様々な施策をすすめた思い入れのある一冊です。
 編集部には週に3、4回足を運びます。営業と編集は意見が割れることもありますが、売りたい、届けたいという気持ちは一緒。仲間として同じ方向を向きたいといつも思っています。

「『群像』と最近担当した単行本と宣伝物です。宣伝物は編集部といろいろなアイデアを出し合いながら制作します」

Voice:03 梶川颯太 さん 2023年4月、講談社入社。同年6月より女性コミック編集部に勤務。

目標は、担当作家さんとの「新連載の立ち上げ」です

 父の影響で昔から漫画が好きでした。中学生の頃に『バクマン。』で編集者の存在を知り……、好きな作品を最初に読めるのはいいなと思いました(笑)。
 大学生の頃は講談社の青年漫画が特に好きだったので、青年誌の編集者を志望しました。ですが、漫画編集者ならどのジャンルにも携わりたかったのが本音です。
 女性コミック編集部で20人程の作家さんを担当しています。連載中の方もいれば、連載を目指す新人作家の方も。打合せでは、作家さんが描きたいものと読者の方々が求めるものが重なるところを見つけられるように意識しています。
 最近は「デザート」本誌の付録で、新人作家の作品を掲載する別冊「Pink」の表紙を担当し、コンセプト提案から依頼までチーフに相談しながら完成させました。また、とくに深く関わった作品の一つが空垣れいださんの『沼すぎてもはや恋』です。5巻の紙版カバーでは、デザイナーの方と打ち合わせを重ねて、提案したリードも採用されました。書店に並んでいるのを見た時は感慨深かったです。
 昨年の講談社漫画賞の贈呈式で、受賞作を担当していた先輩編集者が、壇上の作家さんを見つめて涙ぐむ姿を見ました。自分もいつかそんな場に、担当者として立ち会えたら最高です。

梶川さんが携わった作品の一例。「なかでも『沼すぎてもやは恋』5巻は、帯のリード案が採用され、喜びもひとしおでした」

音羽通りから見た社屋

手前の建物は1934年に竣工した本館、奥に立つ高層ビルは1998年に竣工した高層棟。ほかに、アトリウム棟、スタジオ棟、北棟があります。

エントランス

人の行き来が多い1階エントランス。日中は日の光が差し込み、一日の移り変わりを感じられます。

ホワイエ

講談社で働く人たちや来社された方が自由に利用できるスペース。打ち合わせや読書、オンラインミーティングなど、様々な過ごし方ができます。

週刊少年マガジン編集部

出版物の色校やポスターなどの宣伝物を壁面に貼ったり、グッズを棚上に置いたりと、編集部それぞれのカラーがあります。

スタジオ

講談社のコンテンツやそのプロモーション活動に欠かせない写真や動画。講談社には撮影や収録が可能なスタジオもあります。

カフェテリア

ランチタイムは日替わり定食やパスタ、特製スパイス・チキン・カレー、そば、うどんなど多彩なメニューを楽しめます。毎回テーマを設定して食事をしながら交流する『ごちそう会』というイベントも、カフェテリアで開催しています。

資料センター・図書閲覧室

ニューヨーク・パブリック・ライブラリーのリーディングルームのイメージを反映して作られました。

資料センター・地下倉庫

1909年の創業以来、講談社の全出版物および創作物をつくり出す参考となる他社図書資料の合計43万冊(倉庫収蔵含む)と多数の写真資料が集積されています。

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