東京のイケてる書店
いわゆる一般的な書店が減る一方、テーマ性の高い本屋が増えてきているようです。
本屋ライターの和氣正幸さんに、東京の注目店を教えてもらいました。
大手メディアで書店数の減少が叫ばれている中、個性的な本屋が増えています。たとえば六本木にある「文喫」は、入場料制を取ったことで話題となりました。この店は、本屋の価値を販売だけでなく空間演出や棚づくりにまで拡張した点で興味深いです。一方、台湾発のチェーン書店「誠品生活日本橋」は、日本の書店とはまた違った切り口で本にまつわるカルチャーを紹介していて面白いです。ほかにも、本棚のひと箱を月額制で貸し出すことで成り立つシェア型書店という業態の店も増えていて、直木賞作家の今村翔吾氏が運営する「ほんまる神保町」は有名です。
いま挙げた店はどれもそれなりの規模がありますが、実は小さいながらも魅力的な本屋=独立書店もまた少しずつ増えていることはご存知でしょうか。公式な統計は存在しないので私が個人的に調べたものですが、2023年だけでも100店以上が開店。荻窪の本屋「Title」はその代表的な例です。次のページではそんな独立書店の中から、特におすすめの6店をご紹介。
思いがけない本との出合いも
文喫 六本木
時間も場所も気にせず思い切り読書できたら……。そんな本好きの夢を叶えてくれるのがこちら。入場料を支払えば、一日中滞在OK。約3万冊の中から気になる本を何冊でも読むことができ、気に入った本は購入も可能。誰でも利用できる無料エリアでは、雑誌や雑貨も販売しています。
東京都港区六本木6-1-20
六本木電気ビル1F
営業時間 9:00~20:00
※22:30までの「夜営業」実施中。詳しくは文喫HPまで。
定休日 不定休
入場料 1,650円(土日祝は2,530円)
TEL 03-6438-9120
https://bunkitsu.jp
人文や文学、アート関連に強い!
誠品生活日本橋
台湾の「誠品」グループの日本一号店。雑貨店や飲食店など4つのゾーンからなるカルチャー体験型店舗で、書籍ゾーンである「誠品書店」には、人文・文芸書や美術書など、選りすぐりの書籍が並びます。海外文学も充実していて、活字好きがこぞって来店。台湾の食品や文具なども売られていて、気軽に異文化を味わえます。
東京都中央区
日本橋室町3-2-1
COREDO室町テラス2F
営業時間
平日 11:00~20:00、
土日祝 10:00~20:00
定休日 年中無休
TEL 03-6225-2871
https://www.eslitespectrum.jp
棚主の個性が本に滲み出る
ほんまる神保町
2024年4月にオープンしたシェア型書店。本棚はすべて栂(つが)の無垢材を使用。密度が高く湿気に強いため、本との相性も抜群です。棚自体はシンプルですが、ひと箱ずつに棚主の個性が出ていて眺めているだけでも楽しめます。扱うジャンルはビジネス書からコミックまでじつに様々!
東京都千代田区神田神保町2-23-5
北井ビル1 F・B1
営業時間
11:30 〜19:00、
定休日 年中無休(お盆、年末年始)
TEL 03-6272-9940
https://www.honmaru.me
よりよく生きるための良書が揃う
Title
大手書店チェーン「リブロ」勤務後、2016年に店を開業した辻山良雄さん。ジャンルは多岐にわたりますが、とくに力を入れているのが生活の本。衣・食・住、哲学、社会など、その人がその人らしく生きていくための本が並びます。「いい本は語りかけるから」とポップによる解説はつけず、本と客が対話できるような心地よいレイアウトにこだわります。
東京都杉並区桃井1-5-2
営業時間
12:00〜19:30(日曜は19:00まで)
定休日 水曜、第1・第3火曜
TEL 03-6884-2894
https://www.title-books.com
和氣さん厳選! 一度は訪れたいこだわりの独立書店
屋上のある本屋&カフェ&ギャラリー
Twililight
三軒茶屋駅から徒歩5分。茶沢通り沿いにあるパン屋の上にある店です。静謐な空間に並ぶのは海外文学を中心に、詩歌や小説、エッセイにZINEなど。こだわりのコーヒーやワインに軽食を楽しみながら本を読むのは最高の時間です。極めつけは屋上があることで、夕焼け空を見ながら過ごす時間は格別。三軒茶屋に行くなら、必ず立ち寄ってほしい店です。
東京都世田谷区太子堂4-28-10
鈴木ビル3階&屋上
営業時間 12:00〜21:00
定休日 火曜、毎月第1・3水曜日
https://twililight.com
新刊、古本、マニアックなZINEまで
そぞろ書房
『鬱の本』で有名な出版社・点滅社と、編集制作ユニット・小窓舎が運営。10畳ほどの空間に詩歌を中心とした新刊とマニアックなZINEが並び、「ここに置かせてもらうのが初めて」という作家も多いです。展示などのイベントも開催。店の一部の棚は、本好きや作家に貸し出しもしていて、古本などが販売されています。高円寺らしいユニークな一店。
アパートの一室に広がる高円寺的カルチャー空間に浸れます。
杉並区高円寺南3-49-12
セブンハウス 202号室
営業時間 14:00〜20:00
定休日 月曜・火曜・木曜
TEL 050-3635-7162
https://linktr.ee/sozoroshobou
クィア、フェミニズム、孤独や連帯にまつわる本なら
loneliness books
東中野駅の駅前、ビルの4階にある店。ここはなんといっても品揃えが面白い! 日本だけでなく韓国を中心としたアジア全域の、クィア、フェミニズム、孤独や連帯にまつわる本が集められているのです。その思いに共感した人々が世界中からこの店を目指してきます。これからの時代を、意思を持って生きる人にこそ、訪ねて欲しい店です。
東京都中野区東中野1-56-5
ホシノビル 401号室
営業時間 14:00〜22:00
定休日 不定休
https://www.instagram.com/lonelinessbooks/
アーティストが提案する古本やアートブック
コ本や honkbooks
神楽坂にあるアーティストたちが運営する本屋。美術書やZINE、雑貨ばかりかと思いきや、しっかりとした古本屋でもあるのが面白い。思想や人類学、詩集をはじめとした文学、食などの古本が並びます。展示やイベントによってレイアウトが大胆に変わるのも特徴。「この間まで本屋だったのに、いまはスタジオみたい」と言われることも。「表現としての本屋」を考えさせられる店です。
昔ながらの古本屋とアートスペースが絶妙な塩梅で融合しています。
東京都新宿区山吹町294 小久保ビル2F
営業時間:12:00〜20:00
定休日 火曜
TEL:03-6907-2239
https://honkbooks.com
いま一番面白いシェア型書店
本店/本屋の実験室
全国に50店以上はあるシェア型書店の中で、いま一番面白いと私が感じる店です。どこがかといえば、「本を売ることに本気な人」を募集しているところ。他のシェア型書店では本を通したコミュニティ形成が主目的となるのですが、同店は小売店としても本気で取り組むことを明言しているわけです。現在、棚を借りているのは15店。これからどんな展開をするのか楽しみです。
東京都杉並区高円寺北3-5-17
営業時間 12:00〜20:00
定休日 月曜(祝日の場合翌日休)
https://honnonagaya-honten.com
シェア型×新刊のハイブリッド
BOOKSHOP TRAVELLER
私が運営する店。シェア型書店と新刊書店が共存した構造になっています。シェア型書店部分では、棚主おすすめの本や自作のZINEなどが楽しめます。一方、新刊書店部分には、私がセレクトした新刊が並びます。コンセプトは「みんなでつくる本屋」。そのため、棚づくりやフェア、イベントの一部を棚主と一緒に行うことで、自分一人ではできないような企画が実現できています。そこがこの店の魅力かなと、自負しています。
東京都世田谷区祖師谷1-9-14
営業時間 12:00〜19:00
定休日 火曜、水曜
https://traveller.bookshop-lover.com
寄稿・写真:和氣正幸(わき・まさゆき)
独立書店を応援する本屋ライター。『本の雑誌』(本の雑誌社)で連載「本屋の旅人」のほか、多くの媒体に寄稿している。単著に『東京わざわざ行きたい街の本屋さん』(ジー・ビー)、『日本の小さな本屋さん』(エクスナレッジ)他。2020年10月NHK Eテレ「趣味どきっ!」にも出演する。祖師ヶ谷大蔵の本屋「BOOKSHOP TRAVELLER」のオーナーでもある。